地球惑星科学コロキュウム
日時:12月2日(金) 17:00 - 18:30
場所:東大本郷 理学部1号館 839号室
(TV会議システム IP 133.11.228.8)
講演者 :長 勇一郎
タイトル:年代その場計測による太陽系年代学の実証
要旨:
惑星探査のデータに接するとき、今見ている世界はいつ誕生した
のだろうか?というのは、惑星科学者にとって根源的な問いの一
つであると思われ る。本発表ではまず、惑星表面の形成年代がリ
モートセンシングのデータからどのようにして推定されているか
を紹介する。その上で、そこに内在する 不定性と、その不定性を
取り除き真の年代を制約しうる装置の開発状況および将来の展望
について述べる。
固体の地表を持つ惑星の地質ユニットの年代は、衝突クレーター
の数密度を数えるクレーター年代学によって推定されている。本
来、クレーターの数 を数えただけでは土地の相対的な新旧(クレー
ターが多いほど古い、という相対年代)しか分からないのだが、月
のアポロ試料の年代計測結果から、月のクレーター密度と絶対年
代とが結びつけられている。この月のクレーター年代学は、小惑
星の軌道計算などに則って火星軌道や水星軌道へ変換され、 これ
らの天体の表面年代の推定に用いられている。しかし、この計算
には種々の仮定が含まれているためその不定性は大きい。
例えば火星には太古に温暖湿潤な時期が存在したと信じられてい
るが、現在の乾燥寒冷気候への遷移時期については、絶対年代に
して10億年近い不定性がある。外惑星系の年代などは更にモデル
依存性が大きく、殆ど制約できていないと言っても過言ではない。
重力の大きな天体からのサンプルリ ターンミッションには莫大な
コストと技術的な困難さが伴うため、その場で年代を計測できる
装置を惑星着陸探査で送り込むことが出来れば、大変に重要なデ
ータになる。
そこで私は、K-Ar法と呼ばれる手法を用いて、惑星着陸探査のそ
の場で年代を計測する手法の開発を行っている。これまでの所、
LIBS(Laser-induced breakdown spectroscopy)と呼ばれる方法で
Kの量を定量し、QMS(四重極質量分析計)と呼ばれる装置によっ
てArを定量することに成功しつつある。本発表では、これらの
計測法の原理・特徴と現状、および今後の展開について説明し、
これらの装置を固体惑星の表層に送り込めたときに可能となる
科学 について議論したい。



