地球惑星科学コロキュウム

日時:12月16日(金)17:00-18:30

場所:東大本郷 理学部1号館 839号室

(TV会議システム IP 133.11.228.8)


講演者:酒井理紗

タイトル:月地殻形成条件を用いたマグマオーシャン化学組成の制約

要旨:

月は,Apollo計画を始めとして近年のSELENELROまで数多く

の探査が行われてきており,それにより月の地殻は非常に古い年

(>~4.4Ga)を示し,ほとんど純粋なCa斜長石(CaAl2Si2O8)を主

要鉱物とする厚さ数十kmの斜長岩で構成されていることが明らか

となっている.

しかし,探査では詳細で精度の高い情報は月表層付近に限定され

ており,月の内部構造やバルク組成を推定することはいまだに大

きな課題となっている.特にバルク組成は月の形成や進化を理解

する上で非常に重要であるため,従来数多くの推定がされてきた

[Longhi 2003, 2006; Taylor 1982, Taylor et al. 2006など] が,い

まだに統一的な見解はない.

そこで本研究では,観測事実の多い月の斜長岩質地殻に着目する.

月地殻は,月形成直後にほぼ全球規模で融解しているマグマオー

シャンが冷却していく過程で,かんらん石や輝石が析出・沈降し,

分化の進んだマグマオーシャンから析出した斜長石が浮上して形

成されたと考えられている [Wood et al. 1970].本研究では,こ

のようにマグマオーシャンから斜長石が析出・浮上して現在の月

地殻が形成される条件を検討し,観測事実と比較することで初期

マグマオーシャン化学組成(~月バルク組成)に制約を与えることを

目的とした.

はじめに初期マグマオーシャン組成をさまざまに仮定し,簡単な

結晶分化のモデルと熱力学計算を行うことによって斜長石と共存

するメルトの組成を決定した.次にそのメルトの密度・粘性を,

ピストンシリンダーを用いた高圧実験によって求めた.それらを

もとに,それぞれのメルトが対流マグマオーシャン中で斜長石を

浮上・分離できるかどうかを評価した.また斜長石と共存する輝

石組成の整合性,析出する斜長石量と地殻厚みの整合性も検討し

た.これらの考察から,初期マグマオーシャンの化学組成は地球

のマントル組成よりもFeOに濃集している可能性が示された.

 

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